緩和ケア病棟は合法的、消極的な安楽死の場所?

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妻が亡くなる10日前に、入院していたがん診療連携拠点病院と同じ医療法人が経営する緩和ケア病棟(ホスピス)に転院しました。

 

妻は、既に口からは全く栄養を摂ることができない状態だったので、経鼻栄養と中心静脈栄養だけで何とか生命を維持していました。

ところが、緩和ケア病棟に移って3日目には経鼻栄養のチューブと静脈栄養のカテーテルを外し、尿道カテーテルを外し、心電図や血中酸素濃度などのモニターも外されました。

今まで身体にたくさん繋がっていたチューブやコードが全部なくなって、本人は身軽に、自由になったようで喜んでいました。

残ったのは痛み止めの合成麻薬(モルヒネ)の皮下注射だけです。これを1日24時間、常に注入し、特に痛みが激しい時は「フラッシュ」といって瞬間的に合成麻薬を多量に注入します。頭は朦朧としていましたが、これは痛みには効果があったようです。

 

緩和ケア病棟に移ってから5日間は意識がありましたが、6日目から徐々に意識が無くなり10日目に息を引き取りました。緩和ケア病棟での生存期間は大体10日から2週間のようです。

 

口から栄養を摂ることができない患者に全く栄養を補給しないわけですから、生きていけないことは当然わかっています。

医師からは面談室で私にだけ何度か説明がありましたが、ここは一種の合法的な安楽死の場所だなと思いました。

治療方法もなく、回復の見込みがなくなった以上、延命のための栄養補給をしても痛みとの闘いが長引くだけだと思い、私は納得の上で担当医に任せ、同意書にも署名しました。

それほど、ためらいもありませんでした。それは、最初の手術から5年9ヶ月間、妻が苦痛と闘ってきた姿を目の当たりにしてきたからだろうと思います。

一日も早く、妻を苦痛から解放してやりたいという思いの方が強かったようです。

 

日本では積極的安楽死は法律で容認されていないので、妻のような場合は「消極的安楽死」と言うようです。回復の見込みのない終末期の患者に対して救命・回復・生命維持のための治療を中止して苦痛から解放する医療のひとつです。

「消極的安楽死」は、患者本人、または患者の子や配偶者などの明確な意思表示があれば日本の法律でも容認されているので、近年では普及しているようです。

もし、経口摂取ができていれば、そう簡単に消極的安楽死もできないので、死によって苦痛から解放された妻の場合は幸運だったのではないかと思っています。無理にでもそう考えるようにしています。

 

妻が亡くなってから1ヶ月以上が経ちましたが、寂しさはますます募るばかりです。

でも、またこのブログを書く気持ちになったということは、私も少しは立ち直りつつあるのかなと思ったりもします。

妻のありがたさが、先立たれて漸く身に染みる今日この頃です。

 

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