「人生会議」啓蒙のポスター、果たして大金をかけて作る必要があったのかな?
最近、馬面のお笑いタレントを使った「人生会議」啓蒙ポスターが話題になっている。
このポスターに対してがん患者団体が抗議をし、厚労省も配布を中止したらしい。
私的感想としては、タレントのわざとらしい表情の写真、心電図の波形を配したデザイン、弱視者には読みにくい文字の色など、あまりいただけない。
コピーも無駄に長すぎる。
ユニバーサルデザインの観点から見れば、失敗作のポスターだ。
しかし、配布を中止するほどのことはないのではと思った。
このポスターのデザインやコピーが、直接がん患者に繋がるとも思えない。
どちらかというと交通事故とか脳梗塞、心筋梗塞を連想させる。
ただ、「人生会議をしよう」という難しい課題のPRポスターにしてはオチャラケが過ぎたのではないだろうか。
馬面タレントを起用する必要はかったのでは。
ちょっと、やり過ぎの感は否めない。
「命の危機が迫った時、想いは正しく伝わらない。」のコピーは、なかなか良いと思う。
これは身内に先立たれた経験をした人でないとわからないが、その瞬間まで「死」を考えないし、考えたくもない。意識がなくなっても、そのままいつまでも生き続けると思う。
だから、命の危機が迫ったそのときに、治療法や死後のことをあれこれ話すことはできない。
まして、「あなたが死んだ後はどうするの?」と問い詰めることなど、とてもできない。
治療も全て病院の言うがままだ。患者本人の意思など全く反映されない。
また、死の数日前から「せん妄」という症状が現れる。幻覚や妄想、精神障害、意識障害など、認知症に似たような症状だ。
私の妻も、亡くなる数日前から「そこにいたおばさん誰?」とか「そこにいた男の人どこに行った?」などと、気持ち悪いことを私に訊ねた。
妻にしか見えない幻覚(霊?)が見えていたようだ。
この「せん妄」は、死の恐怖を紛らすための人間の本能だという説もある。
日頃から「もしものとき」の話し合いである「人生会議」は絶対に必要だと思う。
元気なうちにだったら、「がんになっても抗がん剤や放射線治療はしないよ。葬儀は花いっぱいにしてね。骨は適当にバラまいておいて」などと冗談半分に言える。
身内に対しても「もし、がんになったら治療はどうする? 死んだ後はどうしてほしい?」と、面白おかしく気軽に訊ねることができる。
重病になった後では訊くことは難しい。
このポスター、税金を4,000万円もムダ遣いして配布中止にしたそうだが、SNSなどでこれだけ話題になって拡散し、それなりのPR効果はあったのではないかな。
病院などに掲示するよりも、所期の目的を果たすことができたのかも知れない。
4,000万円は広告代理店と吉本興業のボッタクリだろうが、
最初からこうなることを見越して、話題性を狙ったのなら、これを手がけたディレクターは見上げたものだ。
でも、そもそもこんな問題を大金をかけて啓蒙する必要もないと思うのだが・・・。
厚労省にとって何かメリットがあるのだろうか?
役人の発想はとかく貧困ではある。予算が余ったのだろう。
あなたも「人生会議」はしておきましょう。日頃から、元気なうちに。