72歳でサラリーマンをやっているということ〜第2弾
以前にも紹介しましたように、現在は印刷会社の嘱託社員として毎日iMacに向かってデザイン制作の仕事をやってます。
72歳でPCに向かって制作作業をしているデザイナーは全国的にもそう多くはないのではと思っています。ディレクションだけをしている人は多いでしょうが。
勤務時間は若い正社員と同じで、月~金曜の朝9時から夕方6時頃までです。時間給なので、いただく給料は若い社員よりも少ないのですが、仕事量は高齢だから少ないということもなく、若い正社員と同等量の仕事をこなしています。
仕事を減らしてもらえないかと言えば、「それでは辞めてください。若い人材を入れるから」と言われるでしょうから、なかなかそれを口には出せません。
特に持病もなく、72歳にしては若いし、まだまだ元気もあるし、永年の経験で仕事も若い者には負けていないとう自負はあるのですが、流石に最近は少しサラリーマン・デザイナーという仕事に辛さを感じることが多くなってきました。
やはり、加齢には勝てないようです。
デザイナーという仕事には二つの大きな試練(ストレス)があると思っています。
1つ目は、デザインは受注業務であるということです。
アートではありませんから、当然、顧客があり、顧客の依頼の上に仕事が成り立っています。
アートであれば自分の思うままに、自由に、好きなように創作して、それを気に入ってくれる人がお金を出してくれます。
しかし、デザインは顧客からの受注仕事ですから、顧客の要望や好みに沿わなければ制作料はいただけません。自分ではこれがベストと思っていても顧客の意図から外れると何度もやり直しをしながら顧客の要望や好みに近づけなければいけません。
私の顧客は様々な業種の企業や団体、病院の各部署の担当者です。その担当者は、ほとんどが私の息子や娘か、それより年下の若者たちです。
顧客のほとんどがそうなのですが、思いつきのイメージや、いい加減な原稿で取り敢えず作らせておいて、その後に色々と細かい注文や原稿の差し替えを何度も容赦なく言ってきます。
そんな我が子のような若者達のわがままをじっと我慢しながら、耐えながら「ハイハイかしこまりました」と修正作業をしなければいけません。
私は、比較的気は長いほうですが、フリーだった頃は若気の至りでたまに客と喧嘩して仕事を途中で断ることもありました。しかしサラリーマンになると会社に迷惑をかけるので、客と喧嘩をするわけにもいきません。どんなに腹が立っても、じっと我慢です。
2つ目は、時間に追われるということです。
デザインや印刷には、どんな仕事にも必ず納期(締め切り)というものがあります。「いつでもできた時でいいですよ」というような仕事はまずありません。
この納期に間に合わせるために初校、2校、3校・・・校了とスケジュールが決められ、それに遅れるわけにはいきません。スケジュールは絶対厳守です。
ひとつ片付いて次の仕事というのなら楽なのですが、常にいくつかの仕事を並行しながらやっていくわけです。
永年経験を積んできても、時には頭がパニック状態になることもあります。
フリーでやっていた若い頃は欲と二人連れで、徹夜も厭わずに修羅場を何度も切り抜けてきましたが、高齢になると段々とこれが辛くなってきます。
この二つのストレス満載の試練を乗り越えないとデザイナーはできません。ですから、短気な人と自己管理ができない人はデザイナーには向かないと思っています。
72歳と6ヶ月を過ぎ、最近少しずつ体力や気力、意欲の衰えを感じ、サラリーマン・デザイナーの辛さを感じることが徐々に増えてきました。
どうやら、老後の備えを疎かにしてきたツケが、じわじわと貯まってきて、底なし沼からの脱出が難しくなっています。
リタイヤできない私のような高齢者にならないように、しっかりと老後の備えをしてください。特にフリーランスでやってる方に忠告します。