デザインコンペをさせるなら、声をかけた会社全部に企画・デザイン料を支払う覚悟を!
広告代理店やデザイン制作会社、印刷会社でデザインの仕事をしていると時々デザインコンペを営業から頼まれます。
例えば、企業が会社案内のパンフレットを作ろうと思い立つと、取引先の広告代理店や印刷会社など数社にデザインと見積りを出させます。
そして、その中で企画やデザインが自社のニーズや好みにピッタリ合った会社に制作を発注するというものです。
一応、見積りも出させますが、見積り価格はあまり考慮されません。
企画、デザインが気に入った会社に「デザインが気に入ったから、お宅にお願いしたいんだけど、他社の見積りはもっと安いんだよね。その価格に合わせてくれるんだったら、お宅に発注するんだけど」と言われ、結局はその価格で受注することになるケースが多いのです。「いや、その価格でしたら、うちは降りさせていただきます」とはなかなか言えません。
この発注方法は、発注者側にとっては選択肢がたくさんできて、価格競争もさせて非常に大きなメリットがありますが、受注者側にとってはデメリットばかりです。
仕事を受注できなかったら、企画・デザイン料はゼロです。それまで注ぎ込んできた労力と時間は報われず、全て骨折り損になるわけです。運良く受注できても他社と比較されて価格を叩かれます。
それでも、競争の激しいこの業界では、ひとつでも多く仕事が欲しいのでヘタな営業は簡単に引き受けてくるのです。制作者の苦労などは全く考えてはいません。
コンペなしで仕事を取ってくるのがデキル営業なのです。
このような発注方法がまかり通っているのは、企画やデザインは品物(商品)ではないと思われているからではないかと考えます。
これが品物(商品)だったらどうでしょう。例えば、今日はお寿司が食べたいなと思った時に、何店かの寿司屋に出前をさせ、全部味見して「お宅の寿司が一番美味しかったからお宅にはお金を払おう。他の店には味見だけだから払わないよ」ということは通用しないでしょう。
私は、このデザインコンペでの発注システムに非常に理不尽さを感じます。近年「知的財産」という言葉を耳にするようになりましたが、企画やデザインも立派な知的財産なのです。採用しなかった広告代理店や印刷会社にも企画・デザイン料だけは支払うくらいの覚悟を発注者は持つべきです。
建築デザイン業界でもコンペがありますが、採用されなくても設計料は支払われるケースが多いようです。これは、印刷物のデザイナーよりも建築デザイナーの方が社会的な地位が高いと思われているからでしょう。
しかし日本は、まだまだ認識が低いようです。これは地方にいくほど顕著で、企画やデザインはお金を払うものではないと思っている輩が多いようです。