葉室 麟著「散り椿」読了! おすすめレビュー

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映画化されたので、原作を読んでみたいと思って図書館で借りた1冊です。

残念ながら映画は見ていませんが、映画にしても面白いだろうなと思った作品でした。

あらすじ

扇野藩という架空の藩のお世継ぎを巡る政争の話で、例によって現藩主の遠戚から自分の得になるご世嗣を担ぎだそうとする悪家老と、現藩主の子をご世嗣にと主張する正統派の二つの派閥の駆け引きや企み、闘いの話が主流になっています。

その伏線として、過去の暗殺事件の謎解きや、幼なじみの男の友情と男女の切ない恋愛話が絡み合って、読み応えのある、葉室 麟らしさを満喫できる作品です。

ストーリー展開は結構複雑で、登場人物も多いので、サラッと読み流せる時代小説ではありませんでした。私にとっては、「何でそうなるの?」と、やや難解 & 消化不良の部分も随所にありました。

これは、私の脳の経年劣化のせいかも知れませんが、ちょっとストーリー構成に無理があるのかなという感も否めません。

映画のキャストは、ちょっと若すぎ

葉室 麟作品の映画化は、2014年に公開された「蜩ノ記」に続いて2作目です。この「蜩ノ記」にも岡田准一が役所広司とともに出演しています 

蜩ノ記 (祥伝社文庫)

蜩ノ記 (祥伝社文庫)

 

この「散り椿」では岡田准一が主人公の剣の達人瓜生新兵衛を演じています。原作では瓜生新兵衛は40代半ばくらいですから、岡田准一ではちょっと若すぎる感じです。

また、黒木華演ずる坂下里美と池松壮亮演ずる坂下藤吾は姉弟ですが、原作では母子です。

映画では全ての登場人物が原作よりも10歳程度若く設定されているようです。原作通りの設定にするとキャストがおじさん、おばさんばかりになってしまうので、これは仕方ないのかも知れません。

やはり、人気の若いイケメン俳優、美人女優が出るから映画館に足を運ぶという方が大多数でしょうから。

ネットで映画の予告編を見ましたが、岡田准一の殺陣はなかなかリアルで迫力があります。彼が殺陣の指導もしたそうですが、今までの時代劇にはなかった新しさを感じます。榊原采女(西島秀俊)との椿の木の前での決闘シーンでは背の低い岡田は相手の脚を狙って斬り込みます。これも理にかなっています。

岡田准一は、すっかり時代劇の顔になったようですね。

黒澤映画のカメラマンだった木村大作が監督と撮影を務めていますので、映像も非常に奇麗です。あの椿の花は本物でしょうか?

原作に優る映画は見たことありませんが、いずれ、アマゾンプライムで公開されたら無料で見たいと思います。

一番印象に残ったのは、涙のラストシーン

原作のラストシーンで瓜生新兵衛に思いを寄せる死んだ妻の妹である里美を残して旅立つシーンでは、胸が熱くなり、涙腺が少し緩みました。引き止める里美に「そなたに思いを寄せる故に、ここに留まるわけにはまいらぬ」と言ってカッコ良く立ち去っていきます。新兵衛は、死んだ妻、篠への思いだけを胸に秘めて余生を生きていく決意をするのです。 涙・涙・・・。

私だったら、きっと「じゃー、いっしょに暮らそうか」ということになることでしょうね。